第十二章 妖精達の休日
第五話 火は風と交わりて炎となる
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むとスープが入った鍋の中にソレをぶちまけたのだ。
時は夕食時―――事態の危急に流石のキュルケも士郎に事情を話し助けを求めたが、時既に遅く、士郎が食堂に押し入った時には“惚れ薬”入りのスープは数人の生徒の口の中へ…………。
“惚れ薬”入りのスープを口にした人数は少なかった。
十人にも満たなかったが、彼らが口にしたスープの中に混入した“惚れ薬”は、実の所かなりヤバイ代物であった。
キュルケがジェシカから貰った“惚れ薬”は、かなりの安物であったのだが、いくつか通常の“惚れ薬”とは違う点があった。効果時間が短いだけなら良かったのだが、厄介な事に何とその効果が“伝染”するのである。“惚れ薬”に犯された者に粘膜接触した者は、同じく“惚れ薬”の効果が伝染り、伝染して初めて見た相手に惚れてしまう。
そこから地獄は始まった。
“惚れ薬”入りのスープを飲んだ生徒が、近くにいた相手に一瞬で惚れ込み襲いかかる。
阿鼻叫喚が響き渡る食堂。
野太い―――悲鳴が上がる。
幸い? それとも不幸にしてか、食堂には―――男子生徒と男性教師しかいなかった。
キュルケとタバサの企みを妨げようと士郎ファンクラブの女子生徒たちが様々な妨害工作をしていると、何時の間にか学院の全女子生徒と女教師を巻き込んだ大騒動となったことから、夕食時の食堂には男たちしかいなかったのである。
その結果として―――食堂は薔薇の園となった。
獣のような匂いと低く野太い悲鳴が響き渡る食堂。
事態に気付いた士郎たちが食堂に押し入った時には既に遅く、もはやそこは異次元の空間となっていた。
後に学院の三大暗黒事件の一つとして語り継がれる“狂乱の薔薇園事件”である。
『ここは―――地獄だ』
食堂に入った士郎が最初に口にした言葉であり、例え七万の軍勢にさえ立ち向かう士郎であっても、先に進むことが出来ず扉を開いた姿のまま後ずさり、扉を閉めて食堂から去っていく程のものであった。その後の事はもう考えないことにした士郎は、どこぞの“魔術師殺し”のように自身を天秤と化すと、最小の犠牲で最大の救いを得るため、感染をこれ以上広げないように食堂の扉を封鎖した。
だが厄介な事に、扉を開いた際惚れ薬が感染した男の多くが士郎の姿を見て惚れ込んでしまったのだ。そして愛に狂った漢達は、その愛の成せる業か、女生徒の協力を得て“固定化”を施され、鉄を超える強度となった筈の扉を破壊すると士郎に襲いかかってきたのである。そこからはもう混乱の極み。食堂から溢れ出す男たちを教室から椅子やら何やらを積み立てバリケードにして押さえ込み、魔法で愛戦士となった漢達の鎮圧を始める女子生徒や女教師がいるわ。廊下の隅で愛し合い始めた男子生徒の姿を凄い勢いで絵に描き始める女子生徒たちはいるわ。こんな事態を起こした“惚れ薬”
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