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剣の丘に花は咲く 
第十二章 妖精達の休日
第五話 火は風と交わりて炎となる
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じたのは初めてよ」
「……怖い」

 タバサの口が小さく動き、こくん、と頷くように頭が揺れた。タバサを見るキュルケの目が優しく細まる。

「嫌われたりしたら、無視されるかもしれない……なんて、色んな嫌な事が頭を過ぎていって……結局何も言えなかったり、関係のない話で誤魔化したり……だから、最後の……最初の一歩が踏み出せなかった」

 キュルケの視線が下がり、テーブルの上に転がる壜に向けられる。

「こんなものに頼ってしまうのも、そう言った弱い気持ちがあるから。こんなものに頼ってでも、あたしは彼にもっと近づきたい―――先に進みたいの」
「―――どうして、そこまで?」

 視線を逸らしたまま、タバサは問いかける。
 そもそもの根本的なモノを。
 キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは、何故そこまで衛宮士郎の事を想っているのか。
 その問いに対し、キュルケは自身の心を省みるように、再度目を閉じる。
 暫くの時が流れ、静寂が部屋に満ちた。
 ゆっくりと瞼を開いたキュルケは、自身を見つめるタバサと視線が合うと、“微熱”があるかのように頬を赤く染めながら童女のように微笑み、



「……さあ、どうしてかしら」



 ―――小さく小首を傾げてみせた。



















 ―――………………さて、その翌日の夜の事である。
 キュルケに誘われ部屋に趣いた士郎は、“惚れ薬”入りのワインを飲まされると、衣装タンスの中に隠れていたタバサに拘束され、朝になるまで色々と搾り取られた―――と言うことはなかった。
 確かにキュルケはその翌日、早朝訓練を終えた士郎に夜のお酒に付き合わないかと誘い、士郎はそれを了承した。だが、その時周りには他に女子生徒たちの姿があった。そのためその日の朝食には、キュルケが夜に自分の部屋に士郎を誘ったと言う情報が士郎のファンクラブに伝わることになった。
 結果として―――そこからキュルケとタバサの戦いは始まった。
 士郎をキュルケの部屋に行かせまいと妨害を行う女子生徒たちと、その女子生徒たちの妨害を妨害するキュルケとタバサ。
 血で血を洗うと言っても足りないその血みどろの闘争は、男子生徒たちの目の届かない闇の中で行われていた。圧倒的に数で劣るキュルケたちであったが、日が暮れる頃、何とかその闘争に勝ち残る事が出来た。しかし、やられた女子生徒たちもタダではやられない。一体どうやったのか、今回の士郎との戦い? での切り札である“惚れ薬”をキュルケの手から奪い取ったのである。焦るキュルケとタバサ。何とか取り返そうと奪った女子生徒を追い詰めたのはいいが、追い詰められ自棄になったその女子生徒は、何をトチ狂ったのか厨房に忍び込
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