第十二章 妖精達の休日
第五話 火は風と交わりて炎となる
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暗く淫猥なものを目に、耳にしてきたため、そっち関係の知識については同い年どこか下手な大人よりも詳しいと言っても良かった。しかし、以前はそのような事には全く興味はなく、恥ずかしがるような余裕もなかったことから、いちいち反応する事はなかったが、今は興味も余裕も、そしてそれを向ける対象もいることからか、今までのように無視することや上手くあしらう事も出来ないでいた。壊れた玩具のように赤く染まった顔の中、口だけをパクパクと動かすだけのタバサをニヤニヤとした笑みで眺めていたキュルケだったが、不意にため息のように小さく息を吐くと、テーブルの上に“惚れ薬”が入った瓶を指先でタバサに向かって押し出した。
「で、どうする。使う? 使わない?」
「……“惚れ薬”を使うのは、何か、違う」
「違うって、どう言うところが? ……ま、確かに正攻法じゃないのは確かね。でも、ね、タバサ。それがナニ?」
「キュル、ケ?」
初めて見るほど真剣な顔をしたキュルケの姿に、タバサは息を呑む。そこに先程までの揶揄うような姿はない。鋭く、強く、そして何よりも熱い。その威に当てられたかのように動けなくなるタバサ。そんなタバサに向け、キュルケは噛み付くように、しかし小さな言葉で告げる。
「あたしはシロウが好き。彼が欲しいのよ…………っ、いいえ。違うわね……そうじゃ、ないわ」
過ぎ去った過去を見るかのように、目を閉じたキュルケは溜め息を吐きながら背もたれに寄りかかる。天上を閉じた目で仰ぎ見るキュルケの体重を受けた椅子が、キシリと音を立てた。
「あたしは、ね。あなたも知ってる通り、今まで何人もの男に恋をして、その度に狙った男は必ず落としてきたわ。でも、少し時間が経てば冷めてしまって、また次の男また次の男……それをずっと繰り返してきた……。“恋は熱しやすくて冷めやすいもの”って誰が言ったのかしら……特にあたしはそれが強くて、“微熱”のキュルケなんて言われるようになる程だったわ。何時もくすぶっていて、直ぐに熱く燃え上がったかと思えば、冷めてしまう……周りから結構色々言われたけど、別に気にしたことはなかった……自分自身もその通りだと思っていたから。でも、違った。あたしは、多分、知らなかっただけなんだと思う」
「知らなかった?」
告解のように天を仰ぎ見ながら自分の想いを語っていたキュルケに、タバサが問う。
タバサの静かな声に、キュルケは閉じていた瞳を開くと、顔を前に向けた。キュルケとタバサの視線が交じり合う。
キュルケの目は、何処か、照れくさそうに笑っていた。
「……“恋”……それとも“愛”……なのか……それが何なのかは自分でも分からない。ただ、ハッキリと言えるのは、シロウは今までの他の男とは違うってことだけ。愛を語る事や身体に触れる事を……こんなに怖いと感
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