第十二章 妖精達の休日
第五話 火は風と交わりて炎となる
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あった。
そう言った薄暗い事情に通じるタバサは、危険性についても長じているため、警戒するようにその小さな眉を微かに顰めてみせる。
「どうやって手に入れたの」
「はいはい、まあ、そう警戒しないの。あなたが考えているような方法で手に入れたわけじゃないのよね、これが」
警戒する猫を落ち着かせるかのように、ゆっくりとした動作でタバサを抑えるような仕草を取ったキュルケは、“惚れ薬”が入ったハートの形をした壜を指先でつつきながら手に入れた経緯を話しだした。
「ほら、あの子。シエスタは知ってるわよね。あの子の従姉妹で最近学院にメイドとして入ってきたジェシカって子がいるでしょ。あの子から貰ったのよ」
「“惚れ薬”は偽物でも本物でも高価。平民が手に入れられるようなものじゃない」
「ええ、そうね。だからコレはジェシカが買ったものじゃないのよ。知ってる? あの子、つい先日まで学院にいなかったでしょ。ま、それには理由があってね。ジェシカの実家って、王都で“魅惑の妖精”亭って言うお店をやってるんだけど、この間店の店員が病気や結婚やらで人手が足りなくなったのよ。で、代わりの店員が入るまでの閨A急遽あの子がお店の手伝いに行ってたらしいんだけど。あの子って、ここに来るまではその“魅惑の妖精”亭の看板娘だったらしいの、だからあの子が店を辞めた際、結構泣いた客が多かったらしいんだけど、ま、それもあってか、戻って来た今がチャンスだと思ったんでしょ。客の一人がジェシカにコレを飲ませようとしたのよ。ま、そう言った手合いに慣れてるあの子は直ぐに怪しいと思って、その客を問い詰めたら―――」
「―――“惚れ薬”と分かった」
「そうゆうこと。で、慰謝料としてこの“惚れ薬”を手に入れたジェシカなんだけど、使う相手がいるわけでもないから扱いに困ってたそうなのよ。ま、一応ご禁制の品物だしね。そこで登場するのがあたしってわけ」
ニコニコ笑いながら、キュルケは自分を指差す。
タバサはキュルケとテーブルの上に転がる“惚れ薬”の閧ナ視線を移動させると、小さく首を傾げた。
「……そのメイドとはどう言った関係なの?」
「友達よ」
タバサの質問に簡潔明瞭に応えるキュルケ。その答えを予想しながらも、タバサは内心で驚きの声を漏らす。貴族が平民のメイドを友達だと言う。それは悪いことではないが、喜ばれるものでもなかった。それは多くの貴族が平民に対し蔑みに似たものを持っているため、貴族社会では表立ってそう言った事を口にするものはいない。それは実力社会であり、魔法が使えなくとも貴族となれるゲルマニア帝国の中でもそうである。だから、例え親しい友人の前であろうと、堂々と平民の娘を友達だと言えるキュルケに対しタバサは驚いていた。だが、それと同時に誇らしい気持ちにタバサはなった。平民も
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