第十二章 妖精達の休日
第五話 火は風と交わりて炎となる
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している切り札に服の上から触れる。
キュルケは内心で強く頷くと、背もたれに倒れ掛かるように身体を起こしたタバサを見る。力ない様子ではあるが、キュルケを見るタバサの瞳には強い意志が感じられた。
「だから、あたしは勝負に出る」
「……何故、わたしにそれを」
小さく、静かに問うタバサに、キュルケは強張りの解けなかった頬を僅かに緩めると、小さな笑みを浮かべた。
「決まってるでしょ。あなたがあたしの親友で、同じ人を好きになったライバルだからよ」
「……それだけ」
何もかも見透かしたかのような、美しくも恐ろしい湖面の底のような蒼の瞳で問われたキュルケは、降参とでも言うように両手を軽く上げた。
「はいはい分かりました分かりました。もう一つあるわよ…………成功率上げるためよ。シロウも男よ。美少女二人に迫られて悪い気はしないわ。数は力よタバサ。どんな戦でも数の力は大事。分かるわよね」
「…………―――勝算はあるの?」
長い闥セ黙が満ちた後、顔を真っ赤に染めたタバサの僅かに開いた口から声が漏れた。独り言にも似たその言葉は、しかししっかりとキュルケの耳に届く。片手で口の端が持ち上がっていくのを自然と隠しながら、キュルケは甘言で堕落に誘う悪魔のような声音でタバサに語りかける。
「ええ、あるわ。あたしの勘が正しければ、最終的にシロウは断れないだろうし―――それに、切り札もあるから、ね」
「……切り札? それは何?」
「何だと思う? ヒントはこれを使ってルイズは女になったわ」
問うキュルケに、タバサは首を傾げたが、直ぐに何かに気付き目を見張った。
「まさか―――」
「そう、これ―――“惚れ薬”よ。ちょっとした伝手で手に入ってね。ご禁制の品だけど、ルイズの使ったような立派なものじゃなくて、効果が一日程度で切れるようなものよ。他にも色々と違う点があるけど、あたし達にとっては都合がいいと思わない?」
キュルケが服の中から取り出し、テーブルの上に置いた紫色の壜を見つめるタバサの目が細まる。
“惚れ薬”―――それは水の魔法で作られる禁断の薬。
使用すれば相手の心を強制的に自分の虜にすることが出来る。その力は強力であり、一種の呪いに近い。解呪することは可能であるが、それにはそれ相応の時間も資金も掛かってしまう。故に、国によって使用を禁止されているご禁制の品物である。とは言え、こう言ったモノを根絶する事はこの世に男と女がいる限り不可能であり、それなりの知識があれば手に入れる事は不可能ではなかった。しかし、こう言ったものは偽物が多く、実際に大枚をはたいて購入した惚れ薬が、実際はただの水だった等と言ったことはそう珍しい話ではなく。本物を手に入れようとするには、やはりそれなり以上の知識と繋がりが必要で
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