第十二章 妖精達の休日
第五話 火は風と交わりて炎となる
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も耳にしてるでしょ“理想郷事件”」
立てた人差し指をゆらゆらと揺らしながらキュルケはタバサに視線で問いかける。
知っているでしょ、と。
そう、勿論タバサは知っていた。
“理想郷事件”―――水精霊騎士隊の隊員と空中装甲騎士団が協力して地下を掘り、本塔の女風呂の覗きを敢行した事件である。覗き自体は事前にその情報を手に入れたセイバーが待ち伏せを行い、のこのことやって来たギーシュたちをぶちのめした事から覗きの被害者自体はいないが、学院成立以来の珍事件により学院は騒然となった。覗きの実行犯たちは、学院側から学院の清掃の罰を受けることになり、今も彼らは学院生から侮蔑の視線を受けながら休み時間等で清掃に従事している。
一気に高まった水精霊騎士隊の名声は、覗きの汚名と共に地へと落ちた。
しかし、それとは逆に名声が高まった者もいる。
それはセイバーと士郎の二人である。
覗きの実行犯を一人で殲滅したセイバーはともかく、何故士郎もなのか? それは士郎だけは覗きをしていないことや、覗きの実行犯に対する罰である掃除を、自分の監督不行だと自ら学院長に謝罪し罰掃除に従事する潔さを評価されただけでなく。その他にも罰掃除の最中、掃除だけでなく学院の長らく放置していた老朽化等による建物の破損の修理、生徒たちの個人的な装飾品等の修理を行ったことから、武勇ばかり一人歩きしていた事で生徒たちが潜在的に感じていた恐怖の念が薄まり、自然と会話が増え、噂や武勇伝ではなく士郎自身が良く知られることになった。それだけ聞けば確かに良い事ではある。実際に良い事ではあるのだが、士郎に恋する乙女としては危機感を感じる事でもあるのだ。その予感は的中し、士郎と話し関わった事で、生徒たちは士郎の様々な魅力に魅了された者が多数現ることになった。おかげで最近、学院の女子生徒の閧ナはセイバー派と士郎派に分かれて何やら日々様々な事をしているらしい。
「ギーシュたちがあんな事仕出かしたってのは別にいいわ。特に気にするようなことじゃないし。問題はそこじゃなくて、あれが切っ掛けで、結構な人数がシロウに熱を上げる事になったってことよ」
悪いことではない。
それは本当に悪いことではない―――のだが、士郎に恋する一人の少女としては少しばかり……いや、結構危機感を感じていた。
そしてそれは別段的外れなものではない。
何故ならば、このままでは―――。
「……このままじゃあたし達、大勢の中の一人になってしまうわよ」
「―――ッ!?」
タバサはまるで、医者に余命を宣告されたかのような驚愕の声なき声を喉奥で漏らす。テーブルに突っ伏していた身体が一瞬にして強張り、浮き上がった身体が直後、力を失ったように「ドスン」と、タバサらしくなく派手な音を立てて
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