暁 〜小説投稿サイト〜
【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
闖入劇場
第九二幕 「ドリーミー」
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目が覚めれば友達がいて、一緒にいてくれる。
だったら怖いことなんてないじゃないか。

「それで、悩みって?」
「え・・・っと、夢見が悪くて・・・・・・でも、もういいや。ユウと一緒にいたら、どうでもよくなった」
「そ、そうなんだ・・・」

沈黙が訪れる。昔はあまりユウが近づくと恥ずかしい思いがあったのだが、友達(ラズィーヤ)からいろんなアドバイスをもらうにつれて、ちょっとずつ詰められる距離が縮んでいる気がする。
さりげなく、すっと横に動いてユウと肩が触れそうな距離まで近づいてみる。こうして並ぶと映画館を思い出すが、やはり胸の鼓動が少し高まった。ユウの存在を意識してしまっている。こういうのが異性の友達というものなのだろうか。

微かに高潮する自身の頬を手のひらで押さえながら、「一緒にいるだけで悩みが吹き飛ぶ関係って、なんだかいいな」と小さく微笑む簪だった。


・・・悩みが飛んで上機嫌の簪とは裏腹に、ユウは何とも言えないもやもやした感情を持て余していたが。

(簪は僕のことを友達だって言う。僕も友達だと思いたい。思いたいのに・・・どうして、この距離が縮むにつれて僕は・・・)

段々、簪の本心が分からなくなってゆく。簪にとって本当にただの友達だと思われているのか、そうではないのか。それを確かめることにだんだんと葛藤が生まれていく。確かめてしまえば、決着がつくかもしれない。

しかしそれを意識すると、心臓が締め付けられて頭がこんがらがる。簪に視線を向けることさえ、だんだんと強い意識に引っ張られているように頻度が増えていく。心の内から湧き上がるこの得体のしれない衝動を抑えるように、ユウは一息吐いた。

「ふぅ・・・」
「・・・?喉、乾いた?これあげる・・・」
「え」

そのペットボトルは、遠目で見た時に簪が飲んでいたものである。もしもこのペットボトルを受け取って飲めば、それは一般に間接キスと呼ばれる行為としてとらえられる事がある。家族観や友達の間ならば別にそこまで意識することじゃないが、思春期の異性同士となれば恥じらいが生まれるモノ。
抵抗があるなら受け取らなければいい。でも簪は善意を断られると、結構あからさまにへこむ。それも自分に非があったと言わんばかりの自責の顔をする。普段他人に善意を向けることに慣れていないものだから、断られると堪えるらしいのだ。

受け取れば恥ずかしいが、受け取らないとそれはそれで傷つける。どうしようか迷いながらも、ユウは一つの事を確認した。

(・・・やっぱり僕と簪は『友達』だ。友達なら気にしないし、友達なら接し方は今までどおりでいい。これでいい、んだよな)

何か喉に引っかかる思いをぐっと押さえ込んで差し出されたペットボトルを掴んだユウは、未だ胸中に立ち込めるもやもやを誤魔化す
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