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マザル 生きる 生きてやれ
作者:hiroki08

マザルは「混ぜるな危険」をわかっていてそれを容認する社会の風潮を批判するというメッセージを込めました。
マザル
 
 お風呂の洗剤と
 トイレの洗剤を
 混ぜた
 白い煙が
 モクモクとあがった

 暴力はいけません
 暴力は絶対に認めません
 暴力をする人は
 人の気持ち、
 痛みを考えない人です
 暴力としつけ
 暴力と規律
 暴力と愛
 暴力と平和
 が混ざったら
 それは暴力ではなくなる
 それは必要悪となる
 それを皆が泣く泣く認める
 今日もあちこちに
 そんな煙たちが
 モクモクとあがる

 太陽が昇る
 今日もうやとむや
 がぐちゃぐちゃに
 混ざりあい
 竜のような白い煙が
 天に昇ったら
 世界が動き始める
 
 生きる
 
 ぼくは幼いころから
 暗いクライこの道を歩いている
 今は臭い水の横を歩いている
 
 しばらくたって
 ぼくの目には
 遠くに見える水の色が
 ねずみ色に見えた
 
 そこにかけよると
 うえからまぶしいものが
 ぼくをおそった
 
 そのまぶしさから
 にげることもできた
 でも、ぼくはそこにつっこんだ
 さらにつっこんだ

 タッタ、タッタという音が聞こえた
 その音はだんだん大きくなる 
 でもつっこんだ

 そして
 たくさんある穴の真ん中から
 ぼくはとびだしたんだ

 ぼくの目の前には
 黒くて長く鋭い振り子が
 何度もかすめていく
 こわかった
 こわかった
 ぼくはこのこわさよりも
 新しい世界が知りたかった
 
 ゆっくり歩き出すと
 目の前から振り子が消えた

 大きく広がる
 白とねずみ色の世界
 ぼくは六本の足を
 震わせながら動かした

 三歩六歩九歩
 新しい世界を
 噛みしめながら

 突然
 大きな影がぼくをのみこんだ
 すごい音をたてて

 
 恐怖で目を瞑ったぼくを
 影は何度ものみこんだ

 音が振り子に変わり
 目をあけた僕の目の目前には
 あの世界で唯一の友達・ねずみさんが
 ぐちゃぐちゃになって死んでいた

 ねずみさんを避けるようにして
 振り子たちが動いている
 ぼくはねずみさんにお別れを告げ
 振り子の中に入っていった

 するりするり
 とはいかながったが
 被害は右触覚の先一センチにとどめ
 振り子ゾーンから抜けだした

 あの世界が長いせいか
 ぼくは暗い道に入っていった

 その道をさらに進むと
 僕の鼻においしそうな匂いの風が
 当たり、ぼくは自然と
 それにつられ
 壁に登っていた 
 
 ブーン 
 という断続的に続く音と
 その匂いが大きくなり
 ぼくはパッと上を見上げた
 すごい速さで何かが回っていたので
 怖くて足を止めた。
 ぼくは振り子のように
 すり抜けようと思ったけど
 あまりの速さに腰を抜かし
 そこから動けなくなった
 でもおいしい匂いがぼくの
 お腹を満たしてくれので
 苦ではなかった

「昼の部終了です」
 ガタン
 という音が聞こえあとに
 それが回転を遅くしてから止まった
 ぼくは新しくできた隙間を通って
 おいしい匂いのもとへ行くことにした
 
 短いトンネルを抜けたら
 そこは明るい場所だった

 
「おい。誰か殺してくれ」
「俺無理です」
「スプレーでいいすか?」
「スプレーはダメだ。厨房なんだから」
「もう男の癖に何しんてんのよ。私がやるわよ」
 大きな生物四匹が
 僕の方を見て何か言っている。

 次の瞬間
「捕まえたよ」
 ぼくの視界は真っ白になった
 驚いた僕は必死に動いた
 
「何こいつ気持ち悪い」
「早く潰して捨てろよ」
「潰すのは無理よ。あんた潰しなさいよ。ほら」
 ぼくは少し見えた隙間を
 めがけダイブした

「うわっ。飛んだよ」
「あんたが早く潰さないからでしょ」
 なんだかよくかわからなかった
 体が宙に浮いていた
 羽根をバタバタとさせて
 はじめての体験だった

 
 生きてやれ

 わたしは海の見える
 丘に咲いていた
 黄色い花

 一年前の夏
 ブーン ブーン
 という音が鳴り
 わたしの体が切られた
 一緒に咲いていた
 仲間達も

 体を切られても
 わたしは生きていた

 そのあと
 ガシャン ガシャン
 と土をおこされ
 根の大部分が切られた

 それでも生きていた

 土が戻され
 わたしは押し潰された
 さらに上から
 何かかけられた
 重い おもいです
 
 二メートルあった
 わたしの体は
 もう数センチ

 熱い あつい
 土を通じて
 もの凄い暑さが
 わたしに伝わってきた
 上がうるさいから
 上で何かやっているんだろう
 
 しばらくたって
 暑さが暖かさに変わり
 わたしの体は
 ぽかぽかだった
 
 ぽかぽかは
 何日も
 続かなかった
 
 今度は体が寒くなってきたぞ
 そろそろ
 冬になるのかな
 春になったら
 外に出て
 また海を見よう

 土の氷がとけたころ
 わたしは長い眠りから覚めた
 
 わたしの体は
 大きくなっていた
 一メートルぐらいはあるだろうか

 そろそろ
 芽を出したいから
 上に出ようと思った
 
 よいしょ よいしょ
 と頑張ったが
 上に出れない

 もう一度力を入れて
 一(ひ) 二(ふ) 三(み)
 よいしょ よいしょ

 ジャリッ ジャリッ
 頭が何かにぶつかった
 痛い イタイ

 痛さを堪えて
 そこを抜けた

 でも
 まだっ真っ暗

 もうひと頑張り
 よいしょ よいしょ

 硬い硬いものは
 わたしが
 何度も何度も
 アタックしても
 少ししか壊れない

 フー
 冬に貯めた
 力はもうない
 ここまでか
 
 春なのに
 僕は眠った
 疲れたから

 あーあ
 よく寝た
 もう夏なんだろうか
 
 寝てる間に土達がわたしに
 パワーをたくさんくれた
 もういっちょやろう
 
 よいしょ よいしょ
 もういっちょ よいしょ
 疲れてるけど止まらない
 早く海が見たいから

 太陽が見えないから
 何日経ったかはわからない
 しかし、外の風が少しだけ入ってきた
 もうひとがんばりだ
 よしやるか

 よいしょ こらしょ
 もひとつ こらしょ
 バリッ バリ バリ バリ

 きらっとした光の方向を見る
 映ったわたしの姿 
 いつの間にか咲いてた
 僕の顔は真っ黒だった
 
 久々の外は真っ暗だ
 でも月がきれいだな
 海風も気持ちいい

 



短編全 1話
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▼最終掲載日時:
2013/10/10 02:01

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