のつぶやき |
2017年 03月 13日 (月) 14時 02分 ▼タイトル 妄想物語32(かきかけ) ▼本文 入念な準備をしても、戦いの結果が出るのは一瞬だ。 数多の呪法師を葬ってきた最悪の呪獣を、生存率50%を、トレックはねじ伏せる事に成功した。 既に致命傷だろう。辛うじてまだ蠢いてはいるが、この上位種にはもう戦えるだけの力が残っていないらしい。そちらから目を逸らし、上位種から切り離された尻尾のようなものを見やる。槍の切っ先のように鋭角的な爪は赤黒く変色している。これが呪獣の攻撃の正体だ。 出血が少ないのは脳を正確かつ無駄ない一撃で破壊し、頭蓋ごと持ち上げているから。どうして簡単に持ち上げることができたのかは、切っ先である爪が相手の体内に侵入した瞬間に内側で開き、頭蓋につっかえる構造だったからだろう。その証拠に爪は複数の継ぎ目のようなものがあり、兜に衝突した衝撃で一部が折れている。 「一部の虫の毒針やエイの毒棘は、刺さった後に抜けにくい構造になっている……だが、これは……まるで最初から相手の体内を破壊する為だけに作られたみたいな………」 人間が釣り針に返しを作ったように、自然な生物が変化したのではなく一定の目的のために――まるで人間を殺すためだけに変化したような構造。本体から切り離された呪獣の体は光を浴びて消滅する。トレックが見つめた爪も、やや間をおいてぼろぼろと崩れ落ちていった。 |