「銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者(新版)」の感想

tukiyomi
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コメント
更新お疲れ様です。

将官になったことで否応なく政治に関わらざるを得なくなったエリヤ君。
名実ともにトリューニヒト派の若きプリンスになった訳で、これまで以上に周囲からの視線に神経と胃を痛めることに。
正直、原作の将官って、現実世界のそれと考えると異様に若い将官がぽんぽこ産まれている訳ですけど、ここら辺、適正な年代における将官に相応しい人材確保が破綻しているともいえる訳で。
ヤンやアッテンボロー、ラインハルトや双璧のように若くして名将として活躍できるのもいれば、ヴァーンシャッフェのように将官というポストに押しつぶされちゃっていく人も多いんですよねえ。

まあエリヤ君の場合、良くも悪くも常識人ですので、将官になって天狗になるということは絶対にないのですが(むしろ自分の欠点を素直に認めている辺り、結構強い人です)エル・ファシルのように、知らない所で恨まれているっていうこともあるという点を忘れていなければいいのですが。
人間って、第三者の行動はよく見えるものですが、自分自身の善意で行った行動については、かなり無頓着ですし。

査問会議でのヤンの行動を見ていると、英雄から降りるというよりも、割と本気で今の世の中に嫌になっているんじゃないのかなと。
現状の同盟の雰囲気なんて、ハイネセン主義の信奉者であるヤンにとっては唾棄すべき以外の何物でもない訳ですし。
もっともこの人の場合、ハイネセン主義を都合のいいように解釈しすぎるきらいはありますが。

>ヤンの中途半端さはルールとできることの兼ね合いができた時に、ルールを優先したために生じます。

そう言う解釈もありますか。
自分はむしろ「方針を決める際に、ヤン個人の感情論が支配的になった時」と思っていました。バーミリオンでのラインハルトへの攻撃中止や、メルカッツを離脱させたのも、ヤン個人の感情がそれを望んでいたが故の物であったと。
そして感情論であるが故に、それが果たされた以降は、満足感を抱くが故に、それ以降の手当てについて碌に対処しなくなってしまうと。
ある意味彼にとって、ルールって、自分の感情論を補強できる際に使えるツールでしかないですからねえ。
原理原則を重視するエリヤ君にとっては、ここら辺でも合わない相手でもありますが。 
作者からの返信
作者からの返信
 
感想ありがとうございます。

作中で触れる機会はないと思いますが、銀英伝の軍隊では抜擢人事が横行してるんじゃないでしょうか。少しでも有能そうな人がいたら抜擢し、うまくいったらそれで良し、失敗したらクビにする。その結果が20代や30代の将官の乱立ではないかと。一見するといい組織に見えますが、本当はやばい組織です。両軍ともに即戦力ばかり欲しがって、軍大学などでの指揮官教育をやってないってことですから。

偉い人は偉いってだけで恨まれます。軍人ならなおさらです。

原作の記述からハイネセン主義の内容を推測いたしますと、「自由は戦って勝ち取るもの。政府権力は本質的に自由と対立するもの。それゆえに政府は小さいほどいい」という英米流の民主主義に近いと思います。そうだとしたら、原作においては、同盟政府にはハイネセン主義が存在せず、イゼルローン及び反戦派にしかハイネセン主義が残っていないように感じます。

バーミリオンで攻撃中止命令が出てなければ、個人的な感情はどうあれヤンはラインハルトを殺したでしょう。動くシャーウッドの森については、停戦しただけで和平交渉が始まってない時点のことですし、メルカッツを拘留せよとの命令も出ていませんので、ルールの範囲内でしょう。帝国のフンメルは横領罪の可能性があるが、それ以外の罪には問えないと指摘しています。

ヤンは私人としては感情論で動くけど、公人としては常にルールに沿って動いてきた人と思っています。ルールと”空気”はイコールではありません。銀英伝の同盟サイドはルールと”空気”の戦いという側面があります。ヤンはルールの側の代表、トリューニヒトは空気の側の代表です。