「外伝 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)」の感想

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良い点
【追憶  ~ 帝国歴486年(後篇) ~】
さすが、軍令のトップ 統帥本部の主 シュタインホフ元帥です。自己評価の低いヴァレンシュタイン中将(当時)より、的確に軍そして宮中への影響を分析していらっしゃる。
本人は袂(たもと)を分かったぐらいにしか考えていなかった様子でしたが、外から見れば、己の軍籍を賭けての強烈なラインハルトへの不信任だった事が分かりました。
これなら、エーリッヒの副司令長官任命も、何ら問題なく、むしろ黒狐が想定した通りに、ラインハルトの司令長官就任より、エーリッヒの副司令長官就任の方が、軍上層部、宮中、そして何よりも遠征に参加していない者も含めた全軍の将官から一兵卒にいたるまでの将兵たちの一致した意思であったと合点が行きます。
寵姫(ちょうき)の弟という縁故で昇進したと揶揄(やゆ)される人物に対して、結果を出し続けており、そして今回も結果を出した人物による万人衆目の前での軍籍を賭けた不信任というのは強烈です。多くの平民、下級貴族の将兵からすれば、ラインハルトも結局門閥貴族の一人でしかありません。彼のカリスマは傍(そば)近くにいる人間には通用するかもしれませんが、エーリッヒの叩(たた)きつけた不信任は、ラインハルトのカリスマを色褪(あ)せたものにしてしまった事は確かです。
将兵の嘆願ぐらいで、軍の人事が簡単に覆る事はありません。余りにも、予定調和な副司令長官就任と感じていた自分の浅薄さが恥ずかしいです。
しかし、この状況でのラインハルトは、孤立している事に慣れきっているだけに、エーリッヒの仕掛けに全く気が付かないでしょうし、軍上層部や宮中の聡(さと)い人物なら、この状況に気が付く事は容易です。元々、宮中や軍上層部、門閥貴族たちに支持基盤を待たないラインハルトは、エーリッヒの不信任により、平民と下級貴族からの支持すら一気にもぎ取られた形になったのですから、四面楚歌(しめんそか)八方塞(ふさがり)になったのに、その事にすら気が付かないというお目出度(めでた)振りです。この仕掛けは、統帥本部長閣下の御眼鏡に適(かな)った様子です。
簒奪(さんだつ)の意図を隠しもしないラインハルトより、平民で見た目だけならエーリッヒの方が御しやすいと考えたのも当然です。総帥本部長閣下もこの時点では、まだ誑(たら)されていないので、首輪を掛ける気満々の御様子です。
軍三長官の一人とはいえ、陛下にバラ園での拝謁を、願い出る事が容易(たやす)くできるという本部長閣下もなかなかに危険な人物です。
ラインハルト=エーリッヒ新体制の宇宙艦隊の状況まで、できれば一気に統帥本部長閣下の目線で拝見したいものです。
 
コメント
【追憶  ~ 帝国歴486年(後篇) ~】
帝国歴487年を楽しみにしております。
天候が落ち着かない日々が続きます。何卒 ご自愛ください。