「亡命編 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)」の感想

貫太郎
貫太郎
 
コメント
ココアさんが現実を観ていないという批判がありますが、逆に現実を観ているから、ヤン提督にある意味で苦言をていしたんじゃないのかと私は思います。現状は反対派を征し和平へ舵を切っているが、決して一枚岩でないのが同盟の実態でしょう。和平派の内情はココア閣下が中心人物に成っているが、構成員の大部分(特に軍)はシトレ派が牛耳ってるのが現状です。そして、和平という目的は同じでも根本部分の主義思想が違うのは、ご承知の通りです。
その状況で、不倶戴天の敵と長期間の和平を結ぶ以上、現実と云う名の現状認識を共有する必要があり、シトレ派内部に大きな影響を与え、さらに政治的駆け引きが苦手で、ココアさんを警戒しているヤン提督にこの様な形ではありますが現実を突きつけるに至ったのは必然ように思われます。
色眼鏡で見ていると云いますが、「チート知識を持ち、原作に対して思い入れがある」というキャラクターを与えられているココアさんが何処まで主人公達を英雄視せずにいられるか甚だ疑問です。本編でも、「決して侮ってはいけない」といいながら、知らず知らずに侮って(色眼鏡で見て)しまった。という行から、ココアさんも無意識に色眼鏡をかけてしまっているのです。本編でもラインハルトに対する処遇を巡って、リヒテンラーデ侯にココアさんの矛盾を突きつけられています。
私はこの欠点が転生者、エーリッヒ・ヴァレンシュタインの人間性であり、読者が彼に自己投影や共感する最大のポイントであると思うのです。
一見すると完璧な存在に見られるココアさんが色眼鏡をかけている(常にではありません)事で彼の人間らしさ(不完全さ)を感じるられ、彼のキャラクターに味を与え、同時にその不完全さが、読者にある種の共感を与えているように私は思います。